My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
――そうか。王様は王妃様を娶る前に王子のお母さんに渡してしまった。
だから王妃様は笛の存在も王様の呪いのことも知らないのだ。
「でも、なら王妃様にその笛を渡して、今からでも吹いてもらえば治るってことですよね!」
「僕は渡す気は無いぞ」
「!?」
その言葉に皆息を呑んだ。
「そ、そんな! だって王様が……お父さんが死んでしまうんですよ!」
「言っただろう。これは王への罰なんだ。母さんを捨てておいて自分だけ幸せになるなんて僕は絶対に許さない」
そのはっきりと憎しみの籠った声に、それ以上何も言えなくなってしまった。
――考えてみれば、呪いのことも治す方法も知っていて王子はこれまで何もせず黙っていたのだ。
そして王が病に倒れた後もその笛を持って城を飛び出している。
(王子は、最初っから王様を助ける気が無いってこと?)
しばらくの沈黙の後。
「王様はそのことを知っているんですか?」
アルさんの低い声。
「母さんに笛を渡したってことは、知ってるんだろう。知っていて、受け入れるつもりなんじゃないか?」
冷めた目で王子は言った。
「これで僕の話は終わりだ。王を治したいなら別の方法を見つけるんだな。さっきもどうにか治まったんだ。案外お前たちの術で本当に治せるんじゃないか?」
軽く笑って、王子は扉へと向かう。
「ここは開けっ放しにしておく。好きに使えばいい」