My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
「城内にいる間は、デイヴィス医師で通せ。一応名が知れているんだ。偽名を考えておいた方がいいかもしれないな。あいつにもそう言っておけ」
あいつとはラグのことだろう。
でも確かに王子の言う通りだ。彼らの正体がばれてしまったらきっと此処にいられなくなってしまう。王子の立場だって悪くなってしまうだろう。
「わかりました。すみません、これから気を付けます」
表情を引き締め私が言うと王子は満足したように頷いて宮殿へと続く渡り廊下を再び歩き始めた。
「で、俺に会いたい人がいるって? 誰だ?」
「あ、それがですね。王様を治したア……デイヴィス先生と話がしたいってお医者さんがさっき書庫に来たんです」
……これは本当に気を付けていないといけない。ついうっかりいつもの呼び名が出てしまう。
でもアルさんはそこには突っ込まず、眉根を寄せた。
「うわ、マジか。いきなり試練来ちゃったな」
「え? ……あ」
そうか。
私はフォルゲンさんに会えたことに喜んでいたけれど、アルさんにとったら医者でないことがバレてしまうかもしれない、よろしくない事態なのだ。