My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
「そう、ですよね。どうしよう、今からでも断ってきましょうか」
「や、此処にいる限りいつかは通らなきゃなんない道だしな、なんとかするさ。それに……術士だってことはもう言っちゃっていいんですよね」
宮殿内への扉に手を掛けた王子に、アルさんは小声で訊く。
すると王子は前を向いたまましっかりと頷き、扉を開けた。
アルさんはそれに少しほっとした顔をして私たちと共に宮殿内に入った。
「で、あいつは? あのまま書庫か?」
「あ……はい」
頷いた私を、アルさんが不思議そうに見た。
「なんか、またあいつカノンちゃんに酷いこと言った?」
ぎくりとする。
平静を装ったつもりが、顔に出てしまったらしい。
私は笑って誤魔化すことにした。――今は考えたくない。
「いえ、大丈夫です。そ、それより、王子!」
私はその前にいるツェリ王子を呼ぶ。
すると王子は足を止めこちらを振り向いてくれた。
「なに?」
緊張を覚えながらも話を切り出す。
「あの、その笛のことなんですが、やっぱり」
「さっき話したことなら、変える気はないぞ。何を言われてもだ」
「……っ」
きっぱりと言われてしまい、言葉に詰まる。