A Z T E C | 年上ドクターの甘い診察



そんな杏のココロを和らげるかのように、
突然心地良さを感じた。



ゆっくりと背中をさすってくれる、
先生の手だった。



何も言わず、咳が出続ける杏の背中を
優しくなでてくれる先生。


私に振り回されてばかりで、
少しは怒ったっていいのに。



「いつも迷惑かけてごめんなさい…

この前も無理して遊びに行こうとしたの止めてくれたのに、何も言わず去ったり…ゴホッ」


今まで強がっていた杏のココロの壁は、
先生の優しさに触れてみるみる壊れていく。



「…こんな私にいつも向き合ってくれる先生に私…ゴホゴホッ」



もし私が、ありのままの自分を、
誰かに正直にさらけ出せる人だったら、



どんなにラクだろう。



必死に堪えていた涙が、杏の頬を伝った。
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