A Z T E C | 年上ドクターの甘い診察


「あの、ごめんなさい…何で泣いてるんだろう」



そう言い終わらないうちに、
背中をなでる先生の手がピタッと止まった。



もう一方の手が杏の頭に
そっと触れたかと思うと、


そのまま優しく先生の胸に引き寄せられた。




ーー突然の出来事に、杏は頭が真っ白になる。




必死にさっき言いかけていた
話の続きをしようとしても、


感情が溢れて胸が苦しくなるだけで、
出てくるのは熱い涙ばかり。



「…ウッ…ウウッ」


何も言えないのが、ただただ悔しい。


広瀬先生だけでもいいから、
本当はちゃんと自分の言葉で伝えたいのに。


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