A Z T E C | 年上ドクターの甘い診察
何回かコールした時だった。
「はい、広瀬です」
耳元で聞こえたのはいつもの落ち着いた声。
さっきまで一緒にいたのに、
その声を聞いて少し泣きそうになる。
「あのッ、鈴木です…」
時折言葉に詰まりながらも、
車の中にカギを落としてしまったかもしれないと伝えた。
「雨の音すごいけど、今どこにいるーー…」
雨で身動きが取れず、
ずっとドアの前にいると伝えようとして、
杏の携帯は電池が切れてしまった。