A Z T E C | 年上ドクターの甘い診察
「お陰でだいぶ良くなりました。体調崩して、カギなくして…もう病院じゃないのにまた先生に頼っちゃって。
いくらなんでも迷惑すぎますよね!彼女でもなんでもないのに…ハハッ」
杏はわざと明るく振る舞った。
本当はもっと自分に素直になって、
このままもう少し先生に甘えていたい。
笑顔の奥で、そんな気持ちを必死に隠した。
しばらくして先生は急に立ち上がったかと思うと、
杏の座っているソファの目の前にしゃがむ。
「約束、覚えてる?」
目線を合わせて真剣な眼差しで、
こっちを見てくる先生。
"他の誰にも弱さ見せなくていいから、俺にだけ教えてーー"
忘れるわけない、先生との約束。
そんな風に見つめられたら、本当に
もっともっと甘えちゃいそうな気がして、
思わず目をそらした。
「ーー杏、こっち向いて?」
先生が、初めて杏のことを名前で呼んだ。
あの優しくて落ち着いた声で
突然名前を呼ばれ、
カラダがビクッと反応する。
ドキドキしたまま顔を上げた時だった。
「そんな気にするなら、今日から俺の彼女になる?」