ラストトーク〜君がページをめくる時〜
「はい」

「井村茜」

「はい」

「鴇田光矢」

「はい」

「山吹智絵」

「はい」

あっという間に卒業証書授与は終わる。そして校長先生や来賓の方の祝辞があった。

泣きたい気持ちを私はグッと堪える。最後の最後に泣こう。みんなに私が書いた小説を渡してから泣こう。そう何度も自分に言い聞かせ、あふれそうな気持ちを抑えた。

在校生送辞の後は卒業生答辞だ。智絵くんが舞台に上がる。

「厳しかった寒さも和らいだ今日、僕らは緑高校を卒業します。この学校で過ごした三年間は、本当に特別なものでした」

智絵くんの言葉に私は懸命に耳を傾ける。そう、本当に特別だった。たった一年しか過ごせなかったけど、私は人の温かさを知った。一生忘れることのない宝物。

「たくさんの仲間と出会い、分かり合いました。時にケンカをして立ち止まってしまうこともありましたが、懸命に歩いてきました」

いろんなことがあったな……。私の目の前がぼやける。気づいた時には、頬を涙が伝っていた。
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