ラストトーク〜君がページをめくる時〜

先生がそう言いながら教室を見回す。この学校は生徒数が少なく、このクラスも二十人ほどしかいない。

「先生〜！俺の隣空いてるっす」

青井聖也が手を挙げる。聖也と朱莉は友達だ。

「よし、じゃあ座って」

先生は結衣にそう言う。結衣が席に座ると「よろしく」と戸羽航一と山田智樹が声をかける。結衣はペコリと頭を下げた。



「これって……」

小説を読んでいた智絵が呟く。主人公たちの名前はみんなの名前をいじったものだ。

この小説のストーリーは、愛も友達も知らない少女が朱莉たちと関わることで少しずつ人の温もりを知っていく物語だ。



「どうして、みんな私に優しくするの？私なんか生きる価値なんてないんだよ！！」

パチン、と音が響く。朱莉は結衣を叩いていた。結衣の手首からは、まだ血が流れ続けている。

「おい、朱莉」

智樹が朱莉の手を掴む。航一が「手首の傷を見せて」と結衣の手当てを始めた。

「結衣に「人を信じろ」なんて言わない。でも、自分のことをそうやって簡単に傷つけないで！結衣が傷ついたら私は悲しいよ」