ラストトーク〜君がページをめくる時〜
頰に涙が伝う。開け放たれた窓から、涼しい朝の風が入り込んでくる。卒業してから伸ばし始めた髪がふわりと揺れた。

こんな時、私はーーー。

「みんなに、会いたくなる」



高校三年生の四月。私はお母さんと東京からこの村に引っ越してきた。

タクシーや電車はなく、バスが三時間に一本しかない。コンビニと自販機も一つしかなく、村人の多くが農業をしている山に囲まれた村。お母さんはこの村で生まれた。

私にはお父さんがいない。なぜいないのか一度訊いたことがあったが、お母さんは教えてくれなかった。

毎年、お正月にこの村に遊びに来るのが私は楽しみだった。今日からこの村でおじいちゃんたちと暮らす、そう考えると東京での傷ついたあの日々もどうでもいいと感じた。

私が通うことになった緑高校は、全校生徒が四十七人しかいない。一学年だけで二百人以上の高校に通っていた私は、人数を初めて聞いた時とても驚いた。

「一色夢芽です。よろしくお願いします」

私が頭を下げるとクラスメートは興味津々といった表情で私を見つめる。しかし、気さくに話しかけてくれたりして嬉しかった。おかげで最初はあんなに緊張していたのに、昼休みになる頃には安心していた。
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