恋は、二度目のキスのあとで―エリートな彼との秘密の関係―
「は……っ、なんか、すごく苦しい……?」
貧血のような気持ちの悪さを感じ、思わず胸の前で手を握り締める。
その指先がしびれていて……呼吸だけじゃない、体の異変に気付く。
手だけじゃなく、足の指先も怖いくらいに冷たくなっていた。
「な、に……?」
は……は……と、いくら空気を吸っても息苦しさがなくならないどころか、体は重さを増すばかりだ。まるでどんどん石化していっているみたいに、ツラいほどの倦怠感が体中に広がっていく。
とにかく苦しくて、体もうまく動かせなくて、呼吸すら自分の意志でできなくて、急に恐怖に襲われる。
こんなのが続くなら意識を手放してしまいたい――。
「白石。白石、俺を見ろ」
体を支えきれなくなり、グラッと体勢を崩したところを、北川さんが支えてくれる。
両肩を掴まれた状態で目を合わせると、近い距離から私を見つめる北川さんがいた。
真っ黒な瞳は私だけを映している。
「大丈夫だ。白石。大丈夫だから、落ち着け。落ち着いて、呼吸はゆっくりだ。吸って……吐いて……このペースで繰り返して……そう。上手だ。焦らなくていい。怖がる必要もない。俺がいる」
北川さんが作ってくれるペースに合わせて呼吸を繰り返す。
指示されたペースだと苦しくて、もっと早く呼吸をしたいけれど、私を真っ直ぐに見つめる瞳を裏切れず、言うことを守る。
どれくらいそうしていただろう。
いつの間にかかいていた汗が背中で冷たくなっていた。気づくと、ざわざわとした雑音が聞こえるようになり、ハッとする。
今まで私は他の音が聞こえていなかったのかと驚いた。