恋は、二度目のキスのあとで―エリートな彼との秘密の関係―


「そうですよ。女も男も同じ人間ですから。抱きしめたら温かいんです」
「それにやわらかい」
「……それは、私のぜい肉事情ですので、一概には言えませんけど」

太っているつもりはないけれど、痩せている自信もない。
というか、今の発言はセクハラ気味だし私以外には言わない方がいいと思う。

今後のためにそう注意しておこうかと口を開いたとき、北川さんが言った。

「不思議だな。恐怖や嫌悪の対象だったはずなのに……こうしているとしっくりくる」

ふわりと優しく抱きしめていた腕に、少しだけ力がこもる。
今まで下ろしていた手を、そっと北川さんの背中に回してみても、北川さんは怯んだり拒否したりせず、そのまま私を抱きしめていた。


無言で抱き合ったまま、どれくらいの時間を過ごしただろう。

付き合ってもいない男にこんなことされて嫌だと思わない私はおかしいんだろうか。
北川さんの、見た目より厚みのある体とか、しっかりとした腕が心地いいと思ってしまう私は――。

トクトクと、まるでスキップするみたいに軽やかに打つ鼓動が体のなかに響いていた。





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