恋は、二度目のキスのあとで―エリートな彼との秘密の関係―
自信に満ちていることは、堂々とした態度や表情から伝わってくる。同性の私から見ても綺麗なひとだ。
アイラインをビシッと引いた大きな目が、品定めするみたいに上から下へと動く。瞼に乗っているラメの入ったブルー系のアイシャドウをぼんやり眺めていると、バチッと視線がぶつかった。
「昨日の夜、瀬良さんと白石さんが喧嘩していたって話があるんだけど……それって本当なの?」
態度が堂々としている宮崎さんは、声量も堂々としていた。
そのせいで、今まではチラチラ程度だった周りからの視線が比べ物にならないほどに多くなる。
ざっと見渡してみると、社食にいる社員は三十人ってところだろうか。
そのほとんどの視線を集めていて嫌になった。いい見世物だ。
なにもこんな場所で話しかけてこなくてもいいのに……と心のなかで文句を言いながら、どうしようかと考える。
ここでイエスと答えたとしたら、次はなにを聞かれるだろう。
プライベートなことだから、なんて言ったらそれこそ親密な仲だと捉えられてしまう。
瀬良さんと付き合っていると思われるのは避けたかった。
でも、瀬良さんと口裏を合わせていない状態で嘘をつくわけにもいかない。
その場しのぎの嘘をついてどこかで食い違いがおこったら後々面倒だ。
こんなに視線を集めてしまっているなか、どう答えたら一番波風が立たないだろう……。
宮崎さんの目を見ながら、ただひたすらに回避方法を考えていると、しびれを切らしたように彼女が口を開く。
「ねぇ。私、そんなに難しいこと聞いていないよね? ただ瀬良さんと昨日一緒だったか……つまり、はっきり言うと、付き合ってるかどうかが聞きたいんだけど」
厳しい口調で聞かれ、首を振る。
答えやすい問いに変わり、少しだけホッとしながら「あ、いえ。付き合っていません」とは言ったものの……それで終わるはずもなく。