恋は、二度目のキスのあとで―エリートな彼との秘密の関係―
「少し休めば問題ない」
その微笑みを見て……胸の奥の方がギュッと掴まれたみたいに痛くなった。
以前、〝女性恐怖症だって先に言ってしまえばいい〟と提案したとき、北川さんは首を横に振った。
『自分の弱みをさらけ出すのは得策とは言えない。そんなことしたら、もうそこで負けだ』
そのあと私が食い下がっても、『嫌だ』『断る』を貫いた。
女性相手に、自分の弱みをさらけ出すことにはとても抵抗があるみたいだった。
きっと、宮崎さん相手に、あんなに視線を集めながら言葉にするなんて……あんな人数の前で弱みをさらけ出すなんて相当な勇気が必要だったはず。
それを、自分のためではなく、私を庇うために……。
北川さんの優しさになのか、不器用さになのか、自分の愚かさになのか。熱を持った感情がこみ上げてきて目の奥がじわりと潤む。
でも、私が泣いている場合じゃないと思い、唇をかんだとき、北川さんが「白石」と呼んだ。
顔を上げると、未だに同じ体勢のままこちらを見ている北川さんがいて……重なった視線にドキリとする。
「あ、はい。お水ですか?」
「いや。こっちに来てくれるか?」
「え……はい」
さっき一瞬高鳴った胸を自分自身で不思議に思いつつ、ゆっくりと北川さんに近づく。
温かい色の自然光を浴びている北川さんの顔色は、さっきよりも赤みを取り戻したみたいだった。