恋は、二度目のキスのあとで―エリートな彼との秘密の関係―
「ん……」
入り込んできた舌に、背中がゾクッとする。
北川さんとこういうキスをするようになったのは、付き合い出して数日がした頃。それから会うたびに繰り返しているので、いい加減慣れてもいい頃だと思うのに、されるたび異常なくらいにドキドキしてしまう。
また、北川さんがうまいから余計だ。
想われているんだと、じっくりと思い知らされるようなキスを受けると、体の芯からじわじわと幸福感が溢れどうしようもなくなり、それは泣きたくなるほどで困る。
「ん、ぅ……」
背中に回っている腕も、北川さんの息遣いも、舌の温度も、全部が私を溶かすみたいだった。
キスを止めた北川さんが、微笑んでから私のおでこに唇で触れる。
「明日の社員旅行、遅刻しないようにな」
「はい」
離れて行く手を名残惜しく思いながらうなずいた。
社員旅行は、毎年温泉街だ。強制参加ではないけれど、無料だし断る理由もないので一応毎年参加している。
本当に温泉に入るくらいしかすることがないような場所なので、参加社員の年齢的には割と高めかもしれない。
北川さんも毎年参加していると聞いたときには意外だったけれど、考えてみれば北川さんは旅館の造りが好きだと話していたから、眺めるという趣味も兼ねての参加なのだろう。
去年は、六人ずつ振り分けられて大部屋に泊まったけれど、今年の部屋割りはふたりずつだった。
いくら同性でも大人数だと気を使うので、個人的にはふたりくらいがちょうどいいと思う。
しかも、参加者が奇数だったため、私だけひとり部屋で得した気分だった。