恋は、二度目のキスのあとで―エリートな彼との秘密の関係―
「そういえば、瀬良さん見た? 宴会の時、袴田さんにぐいぐい来られてたね」
「そうでしたね。あれって、インテリアデザイナーの方でしたっけ?」
「そうそう。普段は、クロスとかカーテンとか実物が置いてある別館にいるからあまり会わないけど、もうベテランだよ。たしか、私よりも年上だったかな」
瀬良さんは、隣の席を陣取った袴田さんにあからさまなアプローチを受けていた。
宴会では他の社員の目もあるのに、袴田さんは瀬良さんの腕に自分の腕を絡めていて、さっきのカップルじゃないけれど、公共の場でよくやるな……と呆れるほどだった。
お酒が入っていたせいもあるのかもしれない。
一方の北川さんの両隣は部長職の男性社員で、たぶん、他の社員が嫌がって座らなかった席に座ったのかな、と想像した。あれじゃあ、女性社員も近寄るに近寄れないから、北川さんにとってはベストだったのだろう。
北川さんが平和そうで安心した。せっかくの社員旅行なんだから、どこから女性が出現するかビクビクしていたのでは可哀相だ。
私と付き合うようになってからなぁなぁになってしまったけれど、私以外の女性に対しての恐怖症は未だ克服できていないし、旅行中くらいは、ただ温泉にのんびりつかってリラックスして過ごして欲しい。
「まぁ、瀬良さんがモテるのもわかるけどね。先月も営業成績トップだったって話だし。もし、私が男で同じ営業部だったら、さすがにこれだけずっとトップに居座られたら戦意喪失してやさぐれるかも。……あ、売店到着。あのカップルのせいで消費したカロリー分、甘いやつにしよ」