恋は、二度目のキスのあとで―エリートな彼との秘密の関係―
結果から言うと、料理はどれもとてもとてもとおーってもおいしかった。
私は舌が肥えているわけではないし、割とジャンクなものを好む傾向にあるけれど、そんな私が〝これはちょっとレベルが違う〟と思うほど、どの料理も新鮮でおいしかった。
和食料理店が出す、お刺身やお寿司がおいしいのは当たり前だとしても、どうしてサラダまでもがこんなにも味が違うのかという驚きが隠せない。
途中何度も私が「おいしすぎません?」と感動すると、そんな私を見て北川さんは少し笑って「よかったな」と答えてくれたのだけど。
そのあとも何度も私が繰り返したせいか、最後のほうは「そうか」とだいぶおざなりの返事になっていた気がする。
それにしても……と、さっきから襲ってきている若干のめまいに、眉間をギュッとつまんだ。
「どうかしたか?」
目ざとい北川さんに聞かれ、目をつぶったまま答える。
「いえ、北川さん、あまり私と目を合わせたくないだろうなぁって思ったので、ずっとチラチラ別の場所見るように意識してたらクラクラしちゃって」
ぎゅうっと最後にきつくつまんでから手を離し目を開けると、目を丸くした北川さんが私を見ていた。
「あ、でも大丈夫です。もう治りましたし……」
「俺は、白石とならどれだけ目を合わせていても問題ない……とは思うだけで実際どうかはわからない」
「でしょ。だから……」
「だから、それは俺が調整する。白石はこれ以上変な気を利かすな」
最後、眉を下げた北川さんが「さすがに申し訳ない」とわずかに微笑みを浮かべた。
「じゃあ……はい。わかりました」
最後に残った鯛めしをお茶碗によそっていると、北川さんが「そろそろ本題に入ってもいいか?」と聞く。
そういえばそうだった。
今日は、頼みごとがあると言われてここに来たんだった。