恋は、二度目のキスのあとで―エリートな彼との秘密の関係―


翌日の午前の業務を終え、社食に向かう。
券売機で買ったオムライスの券を調理場と繋がるカウンターで渡すと、ものの数分で出来上がってくる。その速さに毎度のごとく驚きながら、移動して椅子を引いた。

うちの社食にはたぶん、魔法使いがいると思う。

本社十階にある社食には四脚の椅子に囲まれた丸テーブルが十数台と、あとは窓に沿ってカウンター席が二十席ほど設けてある。

一番人数のいる営業部は仕事上のこともあり基本的に外に食べに行くから、ここは比較的いつも空いていて助かっている。ゆったりとした時間が流れ、とても気が楽だ。

同期や先輩と一緒になるとテーブル席を選ぶこともあるけれど、私は基本的にひとりでカウンター席が気に入っている。

窓から見える空や景色を眺めながら食事をするのが好きだし、雨の日は地上を動く色とりどりの傘を眺めるのが楽しい。

今日の空には厚い雲がかかっているけれど、ところどころ切れ目があり、そこから差し込む太陽の光が神秘的で綺麗だ。
ファンタジーなら、あの差し込む光からなにか物語が生まれるんだろう。

――昨日。
結局、ふたり分で優に一万円を超えてしまったご飯代は北川さんが支払ってくれた。同時に、私が北川さんに協力することが決定してしまったけれど、あれは仕方がなかったことだと割り切る。

引き受けてしまった以上、今更駄々をこねていても無駄だ。
私がどうこうできる問題だとは思わないけど、まぁ、できる限り協力しよう。

北川さんの方が頭がいいんだから、私にできる範囲くらいわかっているハズだし、私の度量を超えるようなことは要求してこないだろう。

女性恐怖症だから、おかしな心配もしないでいい。

……しかし。
あんなに強引なひとだったのか……という驚きは、一晩経ってもなかなか消化しきれずに私のなかに残ったままだ。

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