恋は、二度目のキスのあとで―エリートな彼との秘密の関係―
女性恐怖症のひとの心を開き仲良くなるためには、自分は他の女性とは違う!というところを見せるのが一番効果的だと書かれていて……今度こそ、頭を抱えた。
思い当たる節があったからだ。
『私は今現在、絶賛片想い中です! 好きな人がいますから、北川さんにはまったく興味がありません。本当にこれっぽっちも。だから、当然襲ったりしませんし、これ以上近づきませんし、万が一、嘘だったらセクハラで訴えてくれて構いません。それでも足りないなら……あ、警察! 警察に突き出してくれてもいいです。偽装……? 詐欺? わからないですけど、そのへんの罪名で!』
……あれだ。絶対にそう。
奇しくもあれが抜群に効いてしまったということなんだろう。
だから北川さんは私と個室でふたりきりでも食事することができて、目だって合わせられて、さらにはあんな卑怯な手を繰り出せたんだ。
あの時はベストだと思った行動が、今となっては悔いでしかなくて大きなため息が落ちた。
おかしなところで厚い信頼を得てしまった。
無欲の勝利ってこういうことか……と肩を落とす。
もう、女性社員全員に〝北川さんなんか眼中にない〟って叫んでもらうのが一番早いんじゃないだろうか……。
北川さんの仕事の進捗に影響すると訴えれば、相当なひとが協力してくれそうなものだけど……と考えてから、肩を落とす。
現実的じゃなさすぎるし、それに嘘じゃ意味がない。北川さんは頭がいいひとだし、嘘か本当かなんて簡単に見抜きそうだ。