恋は、二度目のキスのあとで―エリートな彼との秘密の関係―
オムライスを食べ終わり、スプーンをお皿に置く。
それから前に広がる空を眺めると、雲の隙間がじわじわと広がり、地上に落ちる光も増えていた。
まだ続いている記事をスクロールして眺め、気持ちを切り替えるようにひとつ息をついた。
まずは、聞き取りからがいいかもしれない。
女性恐怖症とひとことで言ったって、各々症状は違う。
どんな症状がでるのか、それはどのラインで出てしまうのか。苦手意識のある場所やシチュエーション。
……それと、北川さんが話してくれるならその原因も。
北川さんを知ることから始めよう。
そして、ここまで協力する報酬は月に何度かのディナーってことにする。ちょっと自分じゃ払いたくないレベルのお店をあとでピックアップして北川さんに送り付けてやろう。
考えているうちに、やるべきことが整理されてきて頭のなかがスッキリする。
どうせやらなくちゃならないことなら、いつまでも渋って重たい気分を引きずっているよりも早く取り掛かったほうが楽だ。
案ずるよりなんとやらだ。
午後、モデルハウスで待機をしながらパワーポイントで〝北川さんの女性恐怖症対策〟とでも銘打った書類を作成して今度会ったときにでもプレゼンしてみよう。
それを叩き台にして進めていくのがいい。
よし、決まった。
ひとりで、うんうん、と二回うなずいていたとき、オムライスの載っていたお皿の横にストッと誰かが手をつく。
背後に感じた気配があまりに近いから驚いて見上げて……さらに驚く。
手の主は瀬良さんで、その顔がすぐ近くにあったから。
「びっ……くりした……」
腰を折っている瀬良さんに思わず椅子ごと後ずさると、ガタガタと音が立ったせいで周りからの視線を集めてしまう。
二十人ほどが集まる社食。興味深そうにこちらを見ている女性社員の姿もあって、焦りながら瀬良さんを見上げた。