恋は、二度目のキスのあとで―エリートな彼との秘密の関係―
「あっそ。じゃあね。……ああ、貫井さんの床暖の件、方針固まったら一応教えて。場合によっては俺からも一言連絡入れるから」
「うん」
仕事の話に戻ったことにホッとしながらうなずく。
社食を出るだけだっていうのに、何度も周りから声を掛けられる瀬良さんを眺めながら、私ももう戻ろうと席を立とうとすると、同時に、机に置きっぱなしになっていた携帯が震える。
振動音が響いてしまい、慌てて手に取って……思わず顔をしかめてしまった。
液晶画面に表示されたメッセージは、〝十九時〟という時間と、お店の名前だけが並んでいた。
昨日を思い出させるシンプルメッセージの送り主は〝北川修司〟。
デジャブだ。
「え、今日も……?」という私の独り言がむなしく落ちる。でも、さすがに連日はない……と思い立ち、メッセージを送り返す。
『嫌なんですけど。連日は勘弁してください』
『こういうのは慣れが大事だ』
『その辺を歩いている女性と適当にふたりでお話すればいいじゃないですか』
『俺を殺す気か』
ドッキリで女性とふたりきりにしたところで、さすがに死にはしないと思うものの……北川さんの顔色がみるみる悪くなるのが容易に想像できてしまい、ため息を落とす。
『じゃあ、一緒に病院に行きましょう。最短で治してくれないと彼氏も作れないです』
『可能性が極めて薄い男に絶賛片想い中なんだろ。どうせ彼氏はまだ無理だ』
図星なだけに指が止まると、私の返事を待たずにポンポンとメッセージが連投される。
『大体、そんな気持ちを残したまま他の男と付き合うつもりなら誠意にかける』
『見てるんだろ』
『返事』