恋は、二度目のキスのあとで―エリートな彼との秘密の関係―
『自分に自信がないやついるじゃん。〝俺なんか〟とか〝私なんか〟とか、すぐそういう思考になるやつ。うっとうしくてすげーやだ』
学生時代、よく瀬良さんが言っていた言葉だ。
瀬良さんはモデルにスカウトされるくらいに外見が整っていた。卑屈になる必要なんかないからそんなことを言うんだろうと、周りは呆れていたものだ。
けれど、モデルなんて、当たり前だけどその世界にいるひとはみんな美形だ。もれなく美人美女でスタイル抜群が標準装備。
そんななかで挫けずにモデルを続けるには、それくらい勝ち気で自分に自信を持っていなければならなかったのかもしれない。
実際、瀬良さんが雑誌で見せる顔はどれも自信に満ちていてカッコよかったし、他のモデルと比べてもとても魅力的だった。
モデルという世界に飛び込んで、道のりは楽ではなかったと思う。きっと嫌なことも大変なこともたくさんあった。
そんななかで瀬良さんが頑張って勝ちとった自信だ。だから、瀬良さんのそんな言葉をひどいとは思わない。
ただ……一般人の、普通の私は、違う。
いつでも自分に自信なんて持てない。
それは……悪いことなのだろうか。
「お手元の資料をご覧ください」
私が作成した資料を北川さんが見ているのを確認してから続ける。
「北川さんの女性恐怖症の原因がどこから来るものなのか、このなかから見つけ、そこに重点を置きリハビリしていくのが一番かと思うので、少しご協力を」
「……それはいいが、その仕事口調はやめろ。変な感じがする」