恋は、二度目のキスのあとで―エリートな彼との秘密の関係―
「そもそも、私は最悪、北川さんの女性恐怖症が治らなくてもデメリットはないわけですから。強引にいくなんて怖いことはしません」
口ではそう言いながらも、治ったほうがいいに越したことはない。
明日突然、北川さんのこのトラウマがどこかに消えてしまえばいいのに……という思いで、ボールペンでグリグリと項目を塗りつぶしてから顔を上げた。
「じゃあ、この項目を意識的につぶしましょう。言っておきますけど、私ができることなんてせいぜいネットの知識止まりですからね。万が一もっと女性恐怖症がひどくなったとしても文句言わないでくださいね」
北川さんが少し呆然としたあと「心強いな」と笑ったと同時に、おいしそうな匂いとともに料理が運ばれてきた。
北川さんが頼んでくれたのは、甘えびのトマトクリームパスタと、マルゲリータピザ、シーザーサラダに、ほうれん草の冷製スープ。
それに、メダイのカルパッチョに、デザートのケーキとジェラートの盛り合わせ。
連日できついのは、私ではなくて北川さんのお財布なんじゃないだろうか……と思い指摘してみたけれど、北川さんは「問題ない」と、本当になんの問題もないように答えた。
「あの、私、牛丼とかラーメンも好きですよ」なんて、なぜかこっちが申し出てしまったっていうのに、それでも北川さんは「問題ない」の一点張りで、そこから年齢の話になった。