恋は、二度目のキスのあとで―エリートな彼との秘密の関係―
社内の女性社員なんて、北川さんがどれだけ仕事ができるかも自分の目で見て知っているわけだし、惹かれてしまうのも無理はない。
せめて仕事ができなければ、現状はもっとマシだったかもしれないのに……なんて勝手な考えでしかないけれど。
まぁ、でも、そんなモテモテな現状も、女性恐怖症が治ればむしろ嬉しく感じるはずだ、とひとりでうんうんうなずいてから、北川さんを見た。
「ひとつずつ目標を作ってクリアしていきましょう。クリアすることで自信に繋がって、症状が和らぐかもしれないですし。
苦手なものは練習あるのみです。私も小学校の頃、さんざん自転車で転びましたから、きっと大丈夫です」
「お済みのお皿は下げてしまってもよろしいでしょうか」と、店員さんがお皿を持って行ってくれる。
その間もずっと私をぼんやりと見ていた北川さんは、店員さんが下がると同時に聞いた。
「ちなみに自転車は乗れるようになったのか?」
「な……ったというか。必要がなくなったというか」
「つまり?」
どんどん詰めてくる北川さんに、「私のことはいいんです」と言い切る。
そうだ。今は私の話じゃない。結果、乗れないまま小学校を卒業してしまい、必要がなくなったなんて言う必要はない。
勘がいいのか、疑いの目で見てくる北川さんを、きつく見つめ返した。
「真面目な話ですけど」と前置きすると、北川さんはわずかに首を傾げる。
「今までのはなんだったんだ」
「雑談です。こういうのは患者さんがリラックスした状態になってからのほうがいいって、ネットが教えてくれたので」