恋は、二度目のキスのあとで―エリートな彼との秘密の関係―
「その通りだな」と、私が言ったこと全部を肯定する様子に、なんだか罪悪感に胸が締め付けられてしまい、さっきまでの勢いを失う。
大事な部分だしある程度強く言ったほうがいいと思った。けれど……いざ声にしてみると、これじゃあまるで本人を目の前にした悪口だ。
「……あの。これ、北川さんを傷つけてませんか?」
北川さんが反論するわけでもなく素直に聞き入れてくれるから、余計に胸が痛い。
トラウマから救いたいのに、新たな傷を作ってしまったらどうしよう……とすっかり気弱になって聞くと、北川さんは驚いたように目を開いた。
「なにがだ?」
「だって、話しているうちにどんどん北川さんにひどいこと言っている気がしてきて……なんか、ごめんなさい」
うぬぼれるな!と暗に言っているようなものだった。
でも、そもそも北川さんはうぬぼれてはいない。ただ、女性からの言葉や態度に過敏になってしまっているだけだ。
自分自身が傷つかないように、必死になっているだけ。
それなのにひどいことを言ってしまった……と反省して謝ると、北川さんはすぐに首を横に振った。
「謝る必要はない」
「でも……」
「たしかに文字だけでとればひどいことを言われているんだろうが……白石を見ていれば、俺のためを思ってくれているのはわかる。だから、傷ついても気分を害してもいない。むしろ感謝してる。だから、なにも気にする必要はない」
本当にそうだろうか。
だって、四歳も下の私にあんなにも言われてなにも思わないものだろうか。
そう疑問には思ったものの、北川さんがあまりにまっすぐな眼差しをくれるから、信じないわけにはいかず、そのうちに呆れ笑いがこぼれた。