恋は、二度目のキスのあとで―エリートな彼との秘密の関係―
「浮気されたって言ったでしょ。それで別れたとも。なのに……」
尻つぼみになった言葉。
北川さんはしばらくその先を待っていてくれたけれど、そのうちに静かに聞いた。
「再会したらまだ想う自分に気づいたと……そういうことか」
私を責めるでもない、いつも通りの北川さんの声に問われ、少しの間のあとでうなずいた。
「たとえ瀬良さんが私を好きだって言ってくれたとしても、あの過去がある以上、私はもう瀬良さんと恋人には戻れないんです。やり直したところでダメになるのが目に見えてるから……おかしいですよね。好きなのに。……まるで呪いみたいって思ってます」
初恋の残骸みたいなものだって思うのに、いつになっても消えてはくれない。
この気持ちは本当に呪いそのものなのかもしれない。
ズン……と静かに落ちていく感情をどうすることもできず、ただただぼんやりと遠くを眺めていたとき、北川さんがつぶやくように言った。
「なるほど。〝恋は呪い〟か。詩的な表現をするな」
それは、北川さんからすればなんでもない、独り言のような言葉だったのかもしれない。
でも、私には結構な衝撃を持って届き……それは、じっくりと時間をかけて頭までゆき渡った。
「……やっぱり今の聞かなかったことにしてください。今更、すっごい恥ずかしくなってきました」
詩的って……言われてみれば本当にその通りだ。知らないうちにイタいポエムを披露してしまったことに気づき、羞恥心でいっぱいになる。
言葉にするべきことじゃなかった。
「別におかしなことでもないだろ。恋愛中は誰でも詩人になると誰かが言っていたくらいだ。つまり、白石は正常だ」
「いえ、もう本当に勘弁してください……」