恋は、二度目のキスのあとで―エリートな彼との秘密の関係―
「なるほど。じゃあ、社内の女性社員ひとりひとりと面談してクリアしていったらどうですか? まずは仕事する機会が多い部署の女性社員からじょじょに……」
「そこまで暇じゃない」
「でも、コツコツと努力を重ねることが……」
「重ねるにも程がある」
ばっさりと否定した北川さんが、言い終わったあとで小さな咳をする。
そういえば食事の最中も何度か顔を背けて咳をしていた。
咳込むわけでもないし気にしていなかったけれど、もしかしたら体調が悪いのだろうか。
「風邪ですか?」
「ああ。咳だけだ。日中は落ち着いてたんだが……悪い」
「いえ。私は気にしていませんので。雨が降れば肌寒いし、日が出れば暑いくらいだし、気温差があって体調崩しやすい季節ですもんね。でも、食欲はあるみたいでよかったです」
北川さんが注文してくれた料理は、ふたりで食べるには十分すぎるほどの量があった。
けれど全部綺麗に食べ切れたということは、北川さんもしっかりと食べられた証拠だ。
だから安心して笑いかけると、北川さんはなぜかバツが悪そうな微笑みを浮かべた。
「そんなところまで気にさせて悪い」
そう謝った北川さんが続ける。
「明日の夜、電話してもいいか?」
「もちろん。またステップアップですね」
電話は難易度が高い。
以前、プレゼンしたときに私が話したことを、北川さんも覚えていたんだろう。
だから電話なんて言い出したんだとわかり笑顔で答えた。
私はたいしたことはしていないけれど、北川さんの向上心が高いおかげでステップは順調に踏めている。
精神的なことだから、そんなに簡単にはいかないのはわかっているにしても、スタートラインからはもうずいぶん進めたように思えた。
あとは……と、女性恐怖症の特徴としてどんなものがあったのかを考える。