恋は、二度目のキスのあとで―エリートな彼との秘密の関係―
『いつまで言うの? それ。もう謝ったじゃん』
関係を再構築したいなら、柊二の言うように振り切らなくちゃダメなんだろう。
いつまでも拘っていたら過去に捕らわれてしまう。
だけど……じゃあ、このわだかまりはどうやって解消すればいい?
柊二が〝友達と出かけて、そのままそいつの家に泊まってくる〟って言うたびに。
〝バイト先だったから電話出られなくて。ごめんね〟って謝るたびに。
〝本当に?〟って疑う気持ちを作り出す不安の根っこは、今もまだ私のなかにあるのに、ひとりじゃどうにもできないのに、どうすればいいの?
『それにあれは、断れない事情があって仕方なく一回しただけだよ。俺にとっては、仕事みたいなもんだったんだよ。丸く収めるにはするのが手っ取り早かったからそうしただけ。それをいつまでも浮気だって責められてもさぁ……』
心底嫌そうな声で告げられた言葉が、胸に深く刺さった気がした。
あれから、柊二はきっと本当に浮気なんてしなかったんだろう。そして、あの一回の浮気も、柊二の言うように仕方なくだったのかもしれない。
想われているのは十分すぎるほどわかっていたし、きっと私の勘は当たっている。
けれど、そんなこと関係なく、私は柊二と一緒にいる限り、この〝根っこ〟の存在にひとりで苦しまなければならないんだと悟り……しばらくしたあとで、別れを告げた。
――柊二を好きな気持ちのまま。
「貫井様のお宅でしょうか。私、アフターサービス部の白石と申します。業者のほうから連絡がいったかと思いますが、納得いただけたでしょうか。もしご不安な点が残っているようなら、と思い連絡させていただきました」
少し前、瀬良さんから受けた依頼先に確認の電話を入れる。
業者からは、修理の方向で日程も決まったと報告を受けた。それでもお客様に連絡を入れるのは、お客様が〝放っておかれた〟という意識を持つのを防ぐためだ。