恋は、二度目のキスのあとで―エリートな彼との秘密の関係―
「そうですか。その日程で貫井様にご不便をおかけしないでしょうか……はい。ありがとうございます。でしたら、予定通り進めさせていただきますね。次の連絡は工事の前日に業者から入れさせていただきますが、なにか気になることがありましたらいつでも連絡いただければ……はい。では失礼いたします」
小さな行き違いでもお客様に不信感を与えることになりかねないし、今までそういったことが原因のトラブルが何度もあった。
でも今回は、業者からの報告通り、とくに問題はなさそうで安心する。
「貫井さんって、確か瀬良さんのお客様だったよね。床暖の工事だっけ?」
向かいの席から聞かれ、うなずく。
「はい。先日の訪問で問題があるのはリモコン側だってわかったそうなので、とりあえずはリモコンの基盤を確認して修理交換するそうです」
「施工はいつ?」
「十七年前です。補償期間が過ぎてるから費用がお客様持ちになるってことは了承してくれてるので大丈夫です」
柿谷先輩が「それならよかった」と笑顔を返したのにはわけがある。
住宅の補償期間は有限で、部品によって異なるのだけれど、半永久的に補償されると思い込んでいるお客様もたまにいる。
そのため、費用がお客様持ちになると伝えたとき、トラブルとなるケースがある。
実際、先月起こったトラブルなだけに記憶に新しい。
その旨が記載されている書類にお客様の署名捺印があることを、お客様の前で確認してもらい、無事収まったけれど。
お客様の気持ちもわかる。床暖房にしたって太陽光にしたって、修理費用となると安くはないから。