恋は、二度目のキスのあとで―エリートな彼との秘密の関係―
ノートパソコンの右上に貼り付けてある、〝貫井様に確認の電話〟の付箋をとる。朝、今日中にしておかないことを書いて張り付けた付箋は全部で六枚あったけれど、これで最後だ。
パソコンの右下にあるデジタル時計を見ると、時間は16時40分。私の仕事の進み具合的には無事定時には上がれそうだった。
「柿谷先輩、私、今日は定時に上がりたいんですけど、大丈夫ですか? なにかあれば……」
先輩だけ何時間も残業になるのは申し訳ない。
だから聞くと、先輩はノートパソコンを避けるように首を傾けて私を見た。
「大丈夫。私の方もあと三十分もあれば片付くから。今日、同窓会だって言ってたし、遠慮しないで定時で上がりな。なにかおもしろいことが起こったら明日にでも教えて」
にっと口の端を上げた先輩に、呆れて笑ってから、メールの確認だけしてパソコンの電源を落とす。
それからデスク周りを片付けたり、書類系のゴミを集めてシュレッダーにかけていると、ちょうど定時になったため、そのまま上がらせてもらう。
先輩と部長に挨拶をしてから部署を、そして会社を後にした。
十七時を回ったばかりの空はまだ明るく、夜の色は見つけられない。通行人も、ビジネスマンよりも学生の方が多い。
同窓会の場所は会社の最寄り駅から三駅だから、時間には余裕があった。このまま寄り道しないで向かったら早すぎるし、どこかで時間をつぶしたい。
タイムリーに通りがかったのはコンビニだけど、さすがにコンビニで時間をつぶすには無理がある。私には店員さんの視線を感じながら立ち読みを続ける自信はない。
買い物だってないしなぁ。夕飯は同窓会で食べられるだろうし、飲み物もとくに……と考えていて、そういえばとあることを思い出した。