恋は、二度目のキスのあとで―エリートな彼との秘密の関係―


「女性相手にあまりに北川さんがびくびくしていると、〝私が助けてあげたい!〟ってやる気になっちゃうというか。だから、そういうひとを刺激しないためにも、〝女の人怖い!〟っていうのを顔に出さないほうがいいかもしれないなって。……あ、これはネット情報じゃなくて私の憶測でしかないんですけど」

そう付け足した私に、北川さんは納得いかなそうな顔を向けた。

「……出してはいない。顔にも態度にも」
「でも……残念ながら、出てるんです。初めて私と会話した時のこと、覚えてますか? あの時も、北川さん完全にフリーズしてましたし、顔色も悪かったですよ。私、北川さんを気絶させないようにって必死でしたもん」

あんな顔色しておきながら自覚はなかったのか。
北川さんは信じられなそうに眉を寄せ、口元を覆うように手を持っていく。

その様子を見ていてなんだか可哀相にはなったけれど、同情は北川さんのためにならないと心を鬼にする。

「北川さんは普段から無表情……いえ、クールですけど、女性を相手にしているとそこに強張りが足されてる感じなんです。そして時間の経過とともに顔色も悪くなりますし……たぶん、そのあたりから動悸がしたりするのかと」

苦手意識が先行するあまり、緊張感と不安がどんどん大きくなる……のかもしれない。
素人なりに考えた結果だ。

苦手意識をなくすのは無理だと思う。それがなくなるのは、本当に症状が改善されたときだ。
でも緊張感なら、少し軽減する方法はあるかもしれない。

一般的に、手のひらにひとの字を書くだとかそういった方法が広まっているくらいなのだから、女性恐怖症とは別回路からのアプローチで緊張を減らすことは可能だ。そう考えた。


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