恋は、二度目のキスのあとで―エリートな彼との秘密の関係―
「大丈夫です。ありがとうございます」
心配してくれたことにお礼を述べた私に、北川さんは「それならよかった」と言ってから進行方向に視線を戻す。
北川さんの横顔を、車道を走る車のヘッドライトが照らしていた。
「俺も同窓会には一度だけ出たことがあるが、そう面白いものでもなかった。名前もよく覚えていないような人間に囲まれるのは俺にはストレスになるし、親しいやつ数人で集まって話すほうが気が楽だ」
「その気持ちもわかります。でも、北川さんの場合、きっとただ単に女性に寄ってこられちゃったからそんな印象しか残ってないんですよ。男性だけで同窓会開いたらまた違うんじゃないですか?」
「そうかもしれないな」
ふっと笑った北川さんが「そういえば」と続ける。
「学生の頃、流れで自転車で海に行こうという話になってその日の夜中に出発したことがあった。明け方に海についたが……あれは今でも楽しかったと覚えてる」
「へぇ! 楽しそうですね」
「ああ。同窓会なんかより三百倍楽しかった」
出してきた数字にクスクス笑う。
よっぽど同窓会での思い出がよくないものだったんだろう。
同級生の女性に囲まれて青い顔をする北川さんが目に浮かぶようで、少し可哀相になる。
でも、学生時代の繋がりは、会社の繋がりよりは濃いはずだ。だったら性格をわかっている女友達だっているだろうし、そういう女性相手なら恐怖症も軽減……と、そこまで考えて気づく。
今……北川さん――。