恋は、二度目のキスのあとで―エリートな彼との秘密の関係―
「北川さんっ」
立ち止まり、ガシッと腕を掴むと、北川さんは目を丸くして私を見た。
その瞳には、疑問が浮かんでいる。
恐怖や不安は見てとれない。
「どうした?」
「今、ふたつの出来事に驚いてます……」
掴んだままの手にギュッと力を込めても、北川さんの様子は変わらなかった。
こんな、積極的にボディタッチしているっていうのに、だ。
「私、今、割と近距離で北川さんに触ってるんですけど、北川さん、拒否反応起こしてないですよね」
意識した途端に倒れられても困る。
だから、注意深く見守ったけれど、北川さんはやや困惑したような顔をしたあとで「……そうだな」とうなずいた。
「確かに、白石に触られてはいるが……別に不快感はない」
……その言い方はどうだろう。いくら北川さんの女性恐怖症を知っていたところで、不快と言われてしまうのは微妙だ。
でも、返答はしっかりしていて、そこには安心する。
「それと、もうひとつ。北川さん、今、自らプライベートの話をしましたよね」
今までだって私相手なら普通に話はできていた。
でも、今みたいになんでもない過去の思い出話を北川さんから話してくれたのは初めてだ。
さっきもチラッと考えたけれど、プライベートの話や自分の意見を言えないのは、それを女性に知られることで、弱みとして握られたと感じてしまうからだとネットで見た。
でも今、北川さんはそんな心配をすることなく、スルッと話せたというわけで……それってすごい進歩だ。