きみはやっぱり林檎の匂いがする。
「未練? なにを言ってるのよ。ちゃんと相手がいるでしょう」
「あ、俺の友達とは別れて、今は新しいパートナーがいるみたいですよ」
「私のこと、なめてるのかしら?」
「仕方ないですよ。ノーマルの人たちと違って俺らは慎重じゃないんです。付き合う前に身体の相性を確かめる人も珍しくないですからね」
「まあ、それは大事だけど」
追加で運ばれてきた砂肝とうずらの卵をつまみに、どんどん酒が進んでいく。
元々、二十歳を迎える前からサークルの付き合いで軽く飲まされることはあった。
でも綾子さんと友達になり、こうして焼き鳥屋に通うようになってからは覚醒したみたいにどんどん強くなっていく。
「ねえ、零士くんはいい人いないわけ?」
「残念ながらいませんね」
「欲しいと思ってないでしょ?」
「バレてます?」
インスタやフェイスブックで知り合った人はたくさんいるし、フットワークは軽いので呼ばれれば基本的には参加する。
おそらく出逢いは人並み以上にあるけれど、恋愛に関してはどこか警戒してる部分もあったりする。