シンデレラには····程遠い

···動揺


「潤、聞いたよな。」
「ああ。」
「あの、藤堂・クラーク・絢斗が。
一人の大学生女子に
一生を捧げるんだと。」
「コンシェルジュの山田さんも
鈴香ちゃんを気にいってるんだ。
すごいね、あの娘。」
「だが、女を女だと思わない
あの、藤堂・クラーク・絢斗だぞ。
兄貴の回りには、モデル以上の
女が寄ってくるんだぞ
なのに、大学生?
その上、美人でもなんでもない!」
と、頭を抱えてソファーに座る
快斗。

「俺もびっくりしているけど。
なんだが、納得している部分も
あるんだ。
だけど、快斗は嫌なの?
鈴香ちゃんでは。」
「いや~、たぶん、
鈴香ちゃんが嫌とかじゃなくて
兄貴に驚いているかな?」
「ずっと、三人でやってきたから
鈴香ちゃんに社長を取られた感?
じゃないの?
なんだ、かんだ、快斗は
社長が好きだし。」
「なっ、好きは、気持ち悪い
尊敬しているし、勝てる気がしない男
なんだ、あの人は。」
「だけど、もう、鈴香ちゃんに手を
出さない方が良いよ。
次は、本当にないよ。」
と、真面目な顔で言う潤に
「ああ、わかっている。」
「本当にわかってるよね。
あの人が、本当に怒ったら
いくら弁護士の快斗でも
太刀打ち出来ないから。
俺も、助けられないよ。」
と、重ねて言う潤に
「わかってるよ。兄の怖さは。
   俺が一番」
と、言うと潤は、
やっと納得したのか
秘書室に戻って行った。

だが、快斗は落ちつかなかった

女性に対して
あんな態度を取り
俺を睨む兄を
初めてみたから·····

ふっ、潤が言うように
兄さんを取られた···から···なのか

兄は······

俺の自慢で
俺の尊敬する人で
俺が認めた唯一の男

俺の弁護士の仕事は
兄と一緒でなくても
十分に利益を得られる

だが、俺が好きで
ここにいる。
仲良しの潤がいることもあるが
第一は、兄だ。

兄が打ち出す
経営手腕は、目を見張る
それが見たくて
いるようなものだ。

まぁ、他の仕事もきちんと
しているが。
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