シンデレラには····程遠い

···実家へ


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« は~い »
パタパタと走る母の足音が聞こえる

実家に帰るのに
こんなに緊張するのは初めてだ。
となりの絢斗さんは
緊張なんて言葉を知らないのでは
ないかと思うほど普通だ。

見上げる私に
ん?と見つめてくる
その瞳、ずるいなぁ
と、思っていると
玄関が開き、お母さんが
「いらっ·····
で、言葉がとまる
「お母さん?」
「初めまして、藤堂と申します。」
と、私と絢斗さんに
「·····ごめんなさい。
鈴香の母です。
どうぞ、お上がり下さい。」
と、言いながら
私をチラ見するから
ん?と見ると
ニッコリ笑っていた。

お父さんのいるリビングにつくと
絢斗さんは、少し背を降り中へ
入って行き
「初めまして、藤堂と申します。
お忙しい中、お時間を頂きまして
ありがとうございます。」
と、頭を下げる。
父もびっくりして言葉がでないようで
お母さんが
「藤堂さん、腰かけて下さい。
鈴香も座りなさい。」
と、言われて
絢斗さんは、
「失礼します。」
と、ソファーに座り
私も絢斗さんの横に腰かけた。

珈琲を入れて母が
父の横に座ると
絢斗さんが、自分の仕事の話しをし
両親は、他界して弟が一人いること
自分の仕事に私を巻き込むことなく
私には、やりたい仕事をして欲しいと
思っていること。
年が10才も離れているが
私を愛していること
私が大学を卒業したら籍を入れたい事
それまでに一緒に暮らしたい事の
許可を頂きたい。
と、話した。

父と母は、絢斗さんの仕事に
びっくりして顔を見合わせていたが
父が
「あなたほどの容姿と仕事を
持っていれば、鈴香でなくとも
良いのではありませんか?
私も妻も、鈴香には幸せになって
欲しいと思っています。
あなたのそばにいて
鈴香がそう思えるとは
私にはおもえません。」
と、言う父に
父の気持ちもわかる
私もそう思っていた。

だけど、それでも、
絢斗さんと一緒にいたいと
思ってしまった。

そんな私に気づいたのか
絢斗さんは、私の手を取り
握りしめて
「お父様のおっしゃっていることは
理解できます。
ご心配もわかるつもりです。
ですが、私が鈴香でないと
ダメなんです。
他の女性を見ても
なにかを感じた事はありません。
私の心は、鈴香だけに反応します。
鈴香の見せる沢山の表情や
勉学に対しての真面目さ
私の部屋でもリビングの一画の
小さなスペースにちょこんといる
鈴香の全てが可愛くて愛しくて
たまらないのです。

どうぞ、私に鈴香を任せて
頂けないでしょうか?」
と、言う絢斗さんに
私のお気に入りの場所
知っていたんだ。

絢斗さんの家は、広すぎて
落ち着かないけど
あの場所が私は好きで
大半は、あの場所にいる。
「知っていたの?」
「ああ、良くあの場所にいるからな
鈴香の事だから、落ち着かない
と、思っていたんだろ?」
「うん。絢斗さん、凄い。」
「誰でもわかる。
あの場所で小さくなって寝てるし。」
「うそ。いつも運んでくれたの?」
「風邪をひく。」
と、二人で話していると
お母さんが
「お父さん、私も心配だったけど
二人なら大丈夫ではないか
と、思います。」
と、言うと
お父さんが
「鈴香、何でも藤堂さんに
話せるのか?」
と、言うから
「う~ん、話す前に絢斗さんが
気づく事が多いかな。」
と、言うとお父さんは
「すまないね。
私は、娘に過保護でね。
挨拶もしてないね
私は、鈴香の父で菅野 信夫です。
鈴香の母で私の妻のみつです。」
と、言うと
「お父様の過保護になる気持ち
私にもわかります。
改めまして
私は、藤堂・クラーク・絢斗と
申します。」
と、挨拶を交わした。
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