シンデレラには····程遠い
「社長、また招待状が。」
と、秘書の潤。
「飽きないね。
企業が連携して鈴香ちゃん見たさに」
と、社長室のソファーに長い足を組んで
座っている快斗。
「一人で出席すると返事をしてくれ。」
と、ため息をつきながら言う、絢斗。
まったく、鈴香は見世物じゃない。
と、考えていると
「でも、一度、同伴姿を見せたら
落ち着くのでは?」
と、飄々とした顔で言う、快斗。
こいつは、本当に鈴香を心配しているのか
そうでないのか。
まあ、心配しているのだろうが。
「考えてない。」
と、言うと。
「そう言うだろうと思った。」
と、肩を上げてソファーから
立ち上がりドアへ向かう快斗。
潤も
「社長、快斗の意見も良いかと」
と、言うから
「今、鈴香は大学の講義準備を
楽しみながらやっている
煩わしい事さけたい。」
と、優しい顔をして言う絢斗さんに
今だになれなくて
ドキッとする。
本当に、藤堂・クラーク・絢斗に
こんな顔をさせるのは鈴香ちゃんだけだ。
決して美人なわけではない
特別な何かがあるわけでもない
だが、鈴香ちゃんといると
優しさに包まれる
不思議な女性だ。
俺は、社長に頭を下げて
社長室を後にした。
社長室を出ると横の壁に
寄りかかる快斗
「本当に鈴香ちゃんには
別人だよな。」
と、言う快斗に
「社長のあの顔に
今だになれないよ。」
と、言うと
二人は笑いながら
その場を離れた。
実は、快斗も潤も鈴香を大切に
思っていた。