それは一夜限りの恋でした
整理整頓が苦手な彼は、大量にいろんなものをため込んでいた。
第三センターの腐海、あそこに取り込まれたら二度と見つからない、とまで言われていたくらいだ。
最終日の今日、空いた時間を見つけては片付けを手伝っているが、みんながなくしたと思っていたものが次々と出てきて、あれはあながち嘘ではなかったらしい。

そして終業時間がきてみんなが帰ってふたりっきりになっても、終わっていないというわけだ。

「次のセンターでも同じ状態にしたら、いくら次席でも怒られますよ」

「そうだよなー。
わかってるんだけどな」

はぁっと再び、向坂さんの口からため息が落ちる。
転勤先で彼はいまよりひとつ上の役職に昇進するのが決まっていた。
二十代で次席、かなりのエリートだ。

「だいたい、いままでどうしてたんですか?
……結婚、する前とか」

自分で口にしておきながら一瞬、胸の奥でちくりと痛みを感じたけれど気づかないフリ。
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