江戸物語 ~雪月花の鬼~
新撰組 屯所
ドタ、バタバタンッ!!
「…うるせぇな。誰だ…?」
土方がイライラしながら襖を開く。
煩い奴をしばきに行くか、と
歩き始めたその瞬間。
「いい加減にして下さい沖田さん!!」
雪花の叫び声が屯所内に響き渡る。
しかし雪花は街に…。
と、思ったが、土方は考えるのを辞めた。
大体の察しは着いたのだ。
「総司の奴、櫻坂に悪戯でもしてるな。」
そう確信して部屋に戻ろうとする。
しかしそれは叶わなかった。
沖田が土方にぶつかったのだ。
雪花は遠くから土方が見えたので
天井を足場にして沖田の後ろに立った。
「あ、土方さん…。」
不味いな、と確信した沖田。
ス、と背後に引いたが遅く、
土方に自室に引きこまれた。
そして土方の説教が始まった。
「…沖田さん、ご愁傷様です…。」
土方の怖さはこの数日で大体分かっているので
そそくさと雪花は土方の部屋から遠のいた。
その夜…。
綺麗な満月が夜街を照らしていた。
綺麗だと誰もが思う満月を雪花は思わなかった。
彼女にとって月は怒りの印なのだ。
「あの日もこの様な月だったな」
縁側に座りながら嘆く雪花。
しかしそう感じていたのは
雪花だけではなかった。
「…あの日の様な月だ」
雪花と同じ髪色と瞳をしている成年は
窓辺に座って嘆いていた。
髪を背中ぐらいに伸ばし
首のあたりで結っていた。
彼はニッコリ月に向かって笑って見せると
ただ一言こう言った。
「待っててね雪花。必ず君を助けるから…」