江戸物語 ~雪月花の鬼~
数時間後…。
「…この状況は一体…?」
「見ればわかるでしょ。君が僕より強かったら
入隊させるっての。あ、わざと弱気出すのは駄目だから。」
さも当然のように応える沖田。
「じゃあ一君よろしくね。」
「…嗚呼。」
「はじめッ!!」
合図があった途端に雪花に斬りかかる沖田。
上からくると見せかけ、横から打った。
…カラン。
勝負は一瞬でついた。
「…はッ…勝者、桜坂雪花!!」
審判も目で追いつけなかったらしく、
時間差があった。
「今…ッ…どうやって…!?」
「…私のが目で追いつけたら話してあげますよ。」
光の無い藍色の瞳で沖田を見やる雪花。
その表情はつまらない、と言っているようだった。
「嗚呼、あともう一つ言っておきますが、
その実力ならば本気を出すまでも無い。」
雪花の強い威圧に
沖田は黙るしかなかった。
「ほぅ、彼奴を一発で…」
「スッゲェ〜!!」
隊士達の中から声がした。
「なぁ、俺と手合わせしてくんねぇか?」
中でも大柄な男が、雪花に話しかける。
「…私は構いませんが?」
チラリと沖田を見ると、
黙って引いていった。
「ところで俺は薙刀を使うんだが…。
お前はどうする?」
「武器は何でもいいです。使えれば。」
「じゃあ素手でやろうぜ。お互い自信あるみてぇだしな。」
「…。分かりました。」
「…はじめ!!」
再び、雪花が一瞬で勝った。
「…勝者、桜坂雪花!!」
道場の真ん中には大柄の男がうつ伏せで倒れている。
暫くして起き上がった。
「すげぇな。今の見えなかった…。」
「…そりゃ、人間の見えない速度でやりましたから。」
その後もほかの幹部が挑戦したが、全員が全員一瞬で勝敗がついた。
全ての試合が終わってから近藤が雪花に話しかけた。
「流石だ雪花君!!入隊を許可する!!」
周りに歓声が上がっている中、
一人沖田だけは不満そうな顔をしていた。
そして、夜…。
そこには近藤を抜いた四名が
土方の部屋に集まっていた。
「近藤さんはああ言ってるが、
俺は彼奴を信用できん。」
土方が話を切り出した。
「この面子なのはそういうことですか。」
一人の男が言った。
「嗚呼、山崎、お前には彼奴を見張っていて欲しい。何かあったらすぐ報告だ、いいな。」
「はい。」
山崎烝…観察方の一人。
は、土方の命令を聞いて直ぐに雪花の元へ急いだ。
残された二人は
沖田総司、斎藤一だった。
「俺達も同じようなことでしょうか。」
斎藤が土方に尋ねる。
「嗚呼、察しが良くて助かる。
もし、彼奴が異変を起こしたら直ぐに知らせろ。」
『御意。』
「それでは、僕達はこれで。」
沖田と斎藤が席を立とうとしたその時、
襖がガラリと開いた。
顔をのぞかせた、その人物は雪花だった。
「何のようだ桜坂。」
「あの、お話中悪いんですけど。」
雪花がおずおずと話す。
「…何だ。」
「ここ、女人禁制ですよね。」
「だったら何だ。」
「私、女なんですけれども。」
「…そうか。…って、はぁ!?」
さらりと告白した雪花に土方は驚く。
「…土方さん…。」
沖田が嘘でしょという表情で土方を見る。
「…お前等も分からなかっただろうが。」
「いや、容姿を見れば分かりますよ。」
斎藤が口を開いた。
「まず喉仏がないですし、声が高い。」
「…近藤さんに何て言うか…。」
「女の子だって言えばいいじゃないですか」
「お前の考えは楽観的すぎるんだよ。」
深くため息を吐いてから、言った。
「仕方ねぇ、お前隊士達の前では男だと言え。」
「分かりました。」
すんなり受け止める雪花。
「理由きかないのか。」
「だいたい察しはつきます。」
フッと目を伏せると雪花は
くるりと土方に背を向けて
「お休みなさい」
と言って部屋から出て行った。
「…この状況は一体…?」
「見ればわかるでしょ。君が僕より強かったら
入隊させるっての。あ、わざと弱気出すのは駄目だから。」
さも当然のように応える沖田。
「じゃあ一君よろしくね。」
「…嗚呼。」
「はじめッ!!」
合図があった途端に雪花に斬りかかる沖田。
上からくると見せかけ、横から打った。
…カラン。
勝負は一瞬でついた。
「…はッ…勝者、桜坂雪花!!」
審判も目で追いつけなかったらしく、
時間差があった。
「今…ッ…どうやって…!?」
「…私のが目で追いつけたら話してあげますよ。」
光の無い藍色の瞳で沖田を見やる雪花。
その表情はつまらない、と言っているようだった。
「嗚呼、あともう一つ言っておきますが、
その実力ならば本気を出すまでも無い。」
雪花の強い威圧に
沖田は黙るしかなかった。
「ほぅ、彼奴を一発で…」
「スッゲェ〜!!」
隊士達の中から声がした。
「なぁ、俺と手合わせしてくんねぇか?」
中でも大柄な男が、雪花に話しかける。
「…私は構いませんが?」
チラリと沖田を見ると、
黙って引いていった。
「ところで俺は薙刀を使うんだが…。
お前はどうする?」
「武器は何でもいいです。使えれば。」
「じゃあ素手でやろうぜ。お互い自信あるみてぇだしな。」
「…。分かりました。」
「…はじめ!!」
再び、雪花が一瞬で勝った。
「…勝者、桜坂雪花!!」
道場の真ん中には大柄の男がうつ伏せで倒れている。
暫くして起き上がった。
「すげぇな。今の見えなかった…。」
「…そりゃ、人間の見えない速度でやりましたから。」
その後もほかの幹部が挑戦したが、全員が全員一瞬で勝敗がついた。
全ての試合が終わってから近藤が雪花に話しかけた。
「流石だ雪花君!!入隊を許可する!!」
周りに歓声が上がっている中、
一人沖田だけは不満そうな顔をしていた。
そして、夜…。
そこには近藤を抜いた四名が
土方の部屋に集まっていた。
「近藤さんはああ言ってるが、
俺は彼奴を信用できん。」
土方が話を切り出した。
「この面子なのはそういうことですか。」
一人の男が言った。
「嗚呼、山崎、お前には彼奴を見張っていて欲しい。何かあったらすぐ報告だ、いいな。」
「はい。」
山崎烝…観察方の一人。
は、土方の命令を聞いて直ぐに雪花の元へ急いだ。
残された二人は
沖田総司、斎藤一だった。
「俺達も同じようなことでしょうか。」
斎藤が土方に尋ねる。
「嗚呼、察しが良くて助かる。
もし、彼奴が異変を起こしたら直ぐに知らせろ。」
『御意。』
「それでは、僕達はこれで。」
沖田と斎藤が席を立とうとしたその時、
襖がガラリと開いた。
顔をのぞかせた、その人物は雪花だった。
「何のようだ桜坂。」
「あの、お話中悪いんですけど。」
雪花がおずおずと話す。
「…何だ。」
「ここ、女人禁制ですよね。」
「だったら何だ。」
「私、女なんですけれども。」
「…そうか。…って、はぁ!?」
さらりと告白した雪花に土方は驚く。
「…土方さん…。」
沖田が嘘でしょという表情で土方を見る。
「…お前等も分からなかっただろうが。」
「いや、容姿を見れば分かりますよ。」
斎藤が口を開いた。
「まず喉仏がないですし、声が高い。」
「…近藤さんに何て言うか…。」
「女の子だって言えばいいじゃないですか」
「お前の考えは楽観的すぎるんだよ。」
深くため息を吐いてから、言った。
「仕方ねぇ、お前隊士達の前では男だと言え。」
「分かりました。」
すんなり受け止める雪花。
「理由きかないのか。」
「だいたい察しはつきます。」
フッと目を伏せると雪花は
くるりと土方に背を向けて
「お休みなさい」
と言って部屋から出て行った。