江戸物語 ~雪月花の鬼~
甘味処からの帰り道…。

ふと、沖田は口を開いた。


「ねぇ雪花ちゃん。」


「なんでしょう?」


「君さ、折角顔綺麗なんだから
 もう少し笑っていたら?」


ピタ、と雪花は少し固まる。

そしてぎこちないロボットの様な動きで
沖田の方に顔を向け言う。


「沖田さん、今何と…?」


雪花からしたらきっと不思議なのだろう。

自分は醜いと思っていたし、
沖田なんて自分を嫌っていると思っていたから。

それに、雪花はずっと沖田の方が綺麗だと
出会った時から思っていたのだ。


「だから、折角顔綺麗なんだから
 もう少し笑っていたら?って。」


雪花の驚きにはひと目もくれず、
先刻と同じ言葉を繰り返す。

雪花は驚きと戸惑いと疑問が混ざり合って
感情が追いつかなくなっていた。

結果、雪花の顔は…


「…ッ〜/////」


目を見開きながら赤面していた。

沖田は逆にその反応に驚いた様だった。

そして…


「ふ、あはは!!」


吹き出してしまった。

雪花は自分が赤面していることに気づき
とっさに着物の裾で顔を隠した。


「な、何が面白いんですか沖田さん…。」


顔を紅くしながら雪花は沖田を見る。


「いや、君全然表情変えないからさ、
 どうせ無表情なんだろうなーって思ってたのに
 思いっきり赤面してるから面白くって!!」


「…私だって表情くらい変えますよッ…。」


そう言うと、雪花はさくさくと歩いて行ってしまった。

沖田は雪花をおちょくりながら雪花を追う。

しかもとても楽しそうな笑顔で。

雪花はその笑顔が少し怖く思えたのだった。



 
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