いきなり図書館王子の彼女になりました
その時。
高野さんが、クリスマス限定カラーの緑色のカップに入った、ホットコーヒーを二つ運んで来てくれた。
スノーボールも受け皿の上に、2つずつ乗っている。
「…………ごゆっくり」
「ありがとうございます」
彼が高野さんに返事をした。
状況を察した高野さんは、何も言わずにカウンターへと戻って行った。
「…………」
彼は自分のコーヒーカップの皿に入っているスノーボールを一つ、私の口元に運んだ。
「あーん」
少しだけ微笑む彼。
「…これ食べて」
「…………」
言われた通り、大人しく
スノーボールを食べさせて貰った。
甘い。
彼の指の感触と共に、
押し込まれたそれは唇の中で溶けた。
「沙織さんを手に入れる事に夢中になっている間は、ゲーム気分で楽しかったけど」
「…………」
「いざ、我に返ってみたら」
司君は目を伏せた。
こちらを見つめられない様子で。
「……嫌われてもおかしくないくらい、ひどい事をしていたのかも知れないって…」
それまで黙って聞いていた私は
スノーボールを飲み込むと、
すっかり呆れて彼を見つめた。
「…司君、今更…?」
もう、何なの?
変な司君。
「…こっちは死んじゃうかと思うくらい、いつもドキドキさせられてたのに!」
ずっと私をからかってばかりだったのに!
「…!」
彼は顔を上げて、私の目を見た。
私は彼の頬に手で触れた。
「嫌いだったら、付き合ったりしないよ」
暖かくて、柔らかい頬の感触。
いつまでもずっと、触っていたくなる。
「…良かった」
彼は私の手に自分の手を添え、目を閉じた。
「……何日か離れただけでもう、沙織さんに会いたくてたまらなくなっちゃって…」
彼は私の手に、もう一度キスをした。
「…それで戻って来たの?」
「…うん」
「ひどいよ。電話しても繋がらないし。…心配したんだからね」
私は抗議した。
「ごめんね…」
彼の、微かに震える声。
「…僕がいなくなるのは、嫌だった?」
「…嫌………んっ!」
唇に、柔らかい感触。
「……!」
キス…………されてる。
少しだけ潤んだ瞳で
司君は一度、唇を離した。
彼は私の頭の後ろに両手を添えて、
もう一度ゆっくりと、私の唇にキスをした。
「……………」
「今…………司君、から…………」
「うん」
「だって、…………ずっと」
「もう僕から、していいでしょ?」
「沙織さんからのキス、もらったから」
「…………」
私の髪の間にその両指を入れ、
もう一度彼は、唇にキスをした。
…体中の力が無くなってしまう。
「ファーストキスなの。…………司君」
彼は驚いた。
「本当…?」
私は頷いた。
「…嬉しい」
赤くなりながら彼は、微笑んでくれた。
「僕は沙織さん以外、…彩月との1回だけ」
彼は指の間に挟んだスノーボールを再び、私の口元に運んだ。
「彩月と僕は、距離が近くなり過ぎたんだ」
「…………」
「…僕達は血が繋がった親子だったらずっと、一緒の家に住めたのかも」
私は唇にスノーボールを押しつけられたまま、動けなくなった。
「もう一緒にいちゃいけないって、最初で最後のキスで言われた様な気がした」
私の口が開いた瞬間、右手でつまんでいたスノーボールを、彼はゆっくり私の口の中に押し込んだ。
私は押し込まれたスノーボールを何とか口の中で溶かして飲み込んでから、
「…司君、さっきから一体何してるの?」
と抗議した。
「涙を止めるおまじない」
彼は笑った。
…そういえば。
「もうとっくに止まってる」
「…そう?」
彼は悪戯っぽく目を輝かせている。
「…………もう」
また、私をからかってる。
何だか、悔しい。
いつもいつも、私ばっかりドキドキしてる。
私は、自分コーヒーカップの受け皿に乗っていたスノーボールを、1つつまんだ。
「じゃあ、今度は私が食べさせてあげるね」
「…うん」
「はい、あーん」
目と目が合った、その瞬間。
彼の瞳が妖しく揺れた。
「…………司君?」
「……」
「…………どうしたの?早く口、開けて?」
「…………」
私は彼の唇に、スノーボールを押し付けた。
対抗意識を燃やしながら。
彼は私の手首をぱっと握り、
私の指ごと、スノーボールを口に入れた。
…………!!!
慌てて手を引っ込めると、
「…………美味しいね。沙織さん」
上目遣いで
からかう様な表情。
…………指まで食べる事無いのに!!!
「ははは!」
司君、楽しそう。
やっぱりとても、敵わない。
彼は、私のコーヒーカップの受け皿に入っていた最後のスノーボールをつまみ上げると、
「はい。これも頂戴」
私の唇の間にそれを挟んで、
そのまま私にキスをしながら、奪い取った。
「…………あのさ」
突然、私達の背後から声がした。
高野さんが気まずそうに、水のおかわりを手に持っている。
「どのタイミングで来れば良かった?俺」
…………高野さん!!!
…………どこから見てたんですか?!!!
高野さんは司君と私のコップに冷えた水を注いでから、
「もし燈子さんが見てたら、小説のネタにされるから気を付けて」
笑いたそうな表情を殺しながら、カウンターへと戻って行った。
高野さんが、クリスマス限定カラーの緑色のカップに入った、ホットコーヒーを二つ運んで来てくれた。
スノーボールも受け皿の上に、2つずつ乗っている。
「…………ごゆっくり」
「ありがとうございます」
彼が高野さんに返事をした。
状況を察した高野さんは、何も言わずにカウンターへと戻って行った。
「…………」
彼は自分のコーヒーカップの皿に入っているスノーボールを一つ、私の口元に運んだ。
「あーん」
少しだけ微笑む彼。
「…これ食べて」
「…………」
言われた通り、大人しく
スノーボールを食べさせて貰った。
甘い。
彼の指の感触と共に、
押し込まれたそれは唇の中で溶けた。
「沙織さんを手に入れる事に夢中になっている間は、ゲーム気分で楽しかったけど」
「…………」
「いざ、我に返ってみたら」
司君は目を伏せた。
こちらを見つめられない様子で。
「……嫌われてもおかしくないくらい、ひどい事をしていたのかも知れないって…」
それまで黙って聞いていた私は
スノーボールを飲み込むと、
すっかり呆れて彼を見つめた。
「…司君、今更…?」
もう、何なの?
変な司君。
「…こっちは死んじゃうかと思うくらい、いつもドキドキさせられてたのに!」
ずっと私をからかってばかりだったのに!
「…!」
彼は顔を上げて、私の目を見た。
私は彼の頬に手で触れた。
「嫌いだったら、付き合ったりしないよ」
暖かくて、柔らかい頬の感触。
いつまでもずっと、触っていたくなる。
「…良かった」
彼は私の手に自分の手を添え、目を閉じた。
「……何日か離れただけでもう、沙織さんに会いたくてたまらなくなっちゃって…」
彼は私の手に、もう一度キスをした。
「…それで戻って来たの?」
「…うん」
「ひどいよ。電話しても繋がらないし。…心配したんだからね」
私は抗議した。
「ごめんね…」
彼の、微かに震える声。
「…僕がいなくなるのは、嫌だった?」
「…嫌………んっ!」
唇に、柔らかい感触。
「……!」
キス…………されてる。
少しだけ潤んだ瞳で
司君は一度、唇を離した。
彼は私の頭の後ろに両手を添えて、
もう一度ゆっくりと、私の唇にキスをした。
「……………」
「今…………司君、から…………」
「うん」
「だって、…………ずっと」
「もう僕から、していいでしょ?」
「沙織さんからのキス、もらったから」
「…………」
私の髪の間にその両指を入れ、
もう一度彼は、唇にキスをした。
…体中の力が無くなってしまう。
「ファーストキスなの。…………司君」
彼は驚いた。
「本当…?」
私は頷いた。
「…嬉しい」
赤くなりながら彼は、微笑んでくれた。
「僕は沙織さん以外、…彩月との1回だけ」
彼は指の間に挟んだスノーボールを再び、私の口元に運んだ。
「彩月と僕は、距離が近くなり過ぎたんだ」
「…………」
「…僕達は血が繋がった親子だったらずっと、一緒の家に住めたのかも」
私は唇にスノーボールを押しつけられたまま、動けなくなった。
「もう一緒にいちゃいけないって、最初で最後のキスで言われた様な気がした」
私の口が開いた瞬間、右手でつまんでいたスノーボールを、彼はゆっくり私の口の中に押し込んだ。
私は押し込まれたスノーボールを何とか口の中で溶かして飲み込んでから、
「…司君、さっきから一体何してるの?」
と抗議した。
「涙を止めるおまじない」
彼は笑った。
…そういえば。
「もうとっくに止まってる」
「…そう?」
彼は悪戯っぽく目を輝かせている。
「…………もう」
また、私をからかってる。
何だか、悔しい。
いつもいつも、私ばっかりドキドキしてる。
私は、自分コーヒーカップの受け皿に乗っていたスノーボールを、1つつまんだ。
「じゃあ、今度は私が食べさせてあげるね」
「…うん」
「はい、あーん」
目と目が合った、その瞬間。
彼の瞳が妖しく揺れた。
「…………司君?」
「……」
「…………どうしたの?早く口、開けて?」
「…………」
私は彼の唇に、スノーボールを押し付けた。
対抗意識を燃やしながら。
彼は私の手首をぱっと握り、
私の指ごと、スノーボールを口に入れた。
…………!!!
慌てて手を引っ込めると、
「…………美味しいね。沙織さん」
上目遣いで
からかう様な表情。
…………指まで食べる事無いのに!!!
「ははは!」
司君、楽しそう。
やっぱりとても、敵わない。
彼は、私のコーヒーカップの受け皿に入っていた最後のスノーボールをつまみ上げると、
「はい。これも頂戴」
私の唇の間にそれを挟んで、
そのまま私にキスをしながら、奪い取った。
「…………あのさ」
突然、私達の背後から声がした。
高野さんが気まずそうに、水のおかわりを手に持っている。
「どのタイミングで来れば良かった?俺」
…………高野さん!!!
…………どこから見てたんですか?!!!
高野さんは司君と私のコップに冷えた水を注いでから、
「もし燈子さんが見てたら、小説のネタにされるから気を付けて」
笑いたそうな表情を殺しながら、カウンターへと戻って行った。