いちばん星の独占権



ぼんやりしていたけれど、りんくんは応急処置のためにここに来たんだった。



保健の先生は今日も今日とて留守。



というか、昼休みだからね。ご飯を食べたら戻ってくるのだけど、何せあの先生はのーんびりしてるからなあ。





「りんくん、ちょっと待ってね。あ、傷口は洗ってきた?」

「それはバッチリ!」





りんくんの代わりにれーちゃんが返事する。
ほんとうに頼もしい保護者である。





「いやがる麟太郎を連行して水道でジャバジャバーっとね」

「あはは……」




そう、りんくんは痛いのが嫌いなの。

じゃあ殴られたり蹴られたりするのは平気なのかってギモンなのだけど、どうやらりんくん的には違うらしい。



傷口に水がしみたり、消毒液でぴりっとしたり、注射でチクッとしたり────そういう類の痛みがだめなんだって。




「ええと、ガーゼと、消毒液は……っと」




見つけた。

ガラス戸の上の方、けっこう高い位置の方にしまわれていた。


ラベルに “消毒” と書かれているから、きっと間違いない。

背伸びすれば、ぎりぎり届きそうな場所だ。





「ふぬぬ……っ」






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