いちばん星の独占権



精いっぱいのつま先立ち。


すぐに腕も足もぷるぷるしてくるけれど、あと少しで指先がお目当ての消毒液に届きそう────だったのに。




「っ、う、わ……っ」




もうちょっと、というところで体のバランスがふいに崩れて、ぐらっと後ろに勢いよく傾く。


足がふわっと浮く感覚。

ああ、これは後頭部直撃不可避な────ときゅうっと目を瞑ると。




「あ……っぶなー」

「……!」




痛くない。
びっくりして目を開くと、なるちかくん。

背後から抱えて、支えてくれたのだと知る。




「ほのかちゃんなら、やると思ったけど、さすがにひやひやしたー」

「……っ」

「間に合ってよかった」




なるちかくんの目が優しく細まる。
心臓がきゅうっとなった。


それで、腰のあたりにしっかり回ったなるちかくんの腕の感触に、心臓がさらに暴れはじめる。



“ありがとう” のお礼のひとことも言えずに、ただ、じわじわ熱くなってくる体に、頭のなかはじたばた焦っていると。





「……おい、お前らさっさと離れろ」






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