いちばん星の独占権
「土曜日、ヒマ?」
「土曜日……っ?」
「星祭り、行かね」
土曜日……星祭り……。
「今週末だろ、今年」
「そっか、もうその時期か! えーっ、ちょっと麟太郎、私だけ置いてくなんてつれなくなーい? 毎年3人で行ってるのにさあ」
「玲奈、うざい」
「ハア?」
「俺はほのかのこと誘ってんだよ」
予想していたより、ずっとかわいいワガママだった。
星祭り、毎年りんくんとれーちゃんと行っていたし……、今年だってほんとうはそのつもりだったかもしれなくて……。
「ほのか、いい?」
「ええと」
りんくんが返事を求めるようにじっとわたしを見つめる。
うっ、と言葉につまる。
「ええと、星祭りは……その……っ」
なるちかくんが誘ってくれた。
……でも、あれは、お情けで……。
りんくんと行くなら、なるちかくんに付き合ってもらう必要もなくなる……? でも……。
どう答えていいかわからず、ちらり、となるちかくんを見上げると。
なぜかなるちかくんもこちらを見ていて、目が合った。
そして。
「佐野、星祭りはナシ」
「は? 三上がなんで……」
「ほのかちゃんは、俺が先約」
な、と視線を送ってくる。
うろたえつつ、こくりと頷くと、りんくんは目を見開いて、なるちかくんは不敵に笑った。
「俺とほのかちゃんで、デートだから」
“ デート ”
馴染みのないそのワードにぴしりと固まったわたし。
そして……。
「あ゛?」
りんくんの底冷えするような低い唸り声が保健室中に響いた。