いちばん星の独占権


「土曜日、ヒマ?」

「土曜日……っ?」

「星祭り、行かね」




土曜日……星祭り……。




「今週末だろ、今年」


「そっか、もうその時期か! えーっ、ちょっと麟太郎、私だけ置いてくなんてつれなくなーい? 毎年3人で行ってるのにさあ」


「玲奈、うざい」

「ハア?」

「俺はほのかのこと誘ってんだよ」




予想していたより、ずっとかわいいワガママだった。

星祭り、毎年りんくんとれーちゃんと行っていたし……、今年だってほんとうはそのつもりだったかもしれなくて……。




「ほのか、いい?」

「ええと」



りんくんが返事を求めるようにじっとわたしを見つめる。

うっ、と言葉につまる。




「ええと、星祭りは……その……っ」




なるちかくんが誘ってくれた。
……でも、あれは、お情けで……。



りんくんと行くなら、なるちかくんに付き合ってもらう必要もなくなる……? でも……。



どう答えていいかわからず、ちらり、となるちかくんを見上げると。

なぜかなるちかくんもこちらを見ていて、目が合った。



そして。




「佐野、星祭りはナシ」


「は? 三上がなんで……」

「ほのかちゃんは、俺が先約」




な、と視線を送ってくる。

うろたえつつ、こくりと頷くと、りんくんは目を見開いて、なるちかくんは不敵に笑った。




「俺とほのかちゃんで、デートだから」




“ デート ”

馴染みのないそのワードにぴしりと固まったわたし。

そして……。




「あ゛?」




りんくんの底冷えするような低い唸り声が保健室中に響いた。





< 106 / 315 >

この作品をシェア

pagetop