いちばん星の独占権



「……!?」



言ってない、言ってない。
否定しようとして、そこではたと気づく。


“熱中症” ……!

あの不可解な要求は、そういうことだったのだ。




「からかったのっ?」

「まあね」




なるちかくんはあっけなく離れていく。
その、あっけなさに、むっとする。


からかわれたんだ。


恥ずかしい、ちょっとでもその距離の近さに、動揺してしまったこと。

少しだけ……ほんの、少しだけ、赤くなってしまったほっぺたを冷ますように、ぱたぱたと手のひらで扇いだ。




「怒んないでよ、冗談だってば」

「怒ってない、けど……」




最初からキスなんてするつもりなかったのは、なるちかくんを見ればわかる。ほんとうに、ぜんぶ冗談だとその様子が物語っている。




はあ、とため息をついた。

なんだか喉の奥がもやもやするのは、どうしてかな。





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