いちばん星の独占権



思わず目を見開く。
ほんとうに、初耳だった。


素っ頓狂な声をあげるわたしに、れーちゃんはくすくす笑う。




「ぜーったい秘密だよ? 後にも先にもほのかにしか言うつもり、ないんだからっ」


「……告白とか、しないの?」

「できるわけないよーっ。私なんて最初っから対象外! 変に波風も立てたくないしねー」




これにもまた、びっくりした。
だって、れーちゃんだもん。


可愛くて、みんなの憧れで、チア部のマドンナの。


対象外、なんてそんなはず……。




「その分、ほのかにもし好きなひとができたら、私が全力で応援してあげる! 伊達にチアやってないからね! 応援はお手のものよっ」

「んふふ、ありがと」




なるちかくんも、れーちゃんも。

みんな、いろんな恋をして、いろんなことを考えているんだ。



楽しいだけじゃない、甘いだけじゃない感情と向き合っている。


────わたしは……。





「よしっ、完成! 見て! ほのか超カワイイんですけどーっ、なんだか嫁に出したくなくなってきた……」


「嫁、って」

「だって見てよう、頭からつま先までかわいすぎるっ」



れーちゃんが、ゆるくまとめあげた髪に、お花のかざりを差してくれた。一気に顔まわりが華やかになる。


さくらんぼ色のグロスに、やわらかな紫陽花が描かれた白地の浴衣。全部、れーちゃんがわたしに合うように、見立ててくれたの。




「れーちゃんのおかげです」

「なーに言ってんの、ほのかの素材がそれくらい、いいってことです」


「お世辞はいいよ……っ」

「ほんとだって! てか、やばっ、そろそろ行かなきゃ!」




ほらほら、と背中を押されて。
うながされるままに慌てて下駄を履く。




────そう、土曜日、夕刻、今日はこれから星祭りなのです。





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