いちばん星の独占権
「うん」
“すきなひと” 。
高校生にもなれば、わざわざ言われなくてもわかる。
“すき” には含みがあって、つまりは狭義の方────ライクじゃなくて、ラブの方。
なるちかくんが聞いているのは、恋愛感情を抱いている相手はいるのか、ってこと。
どうして、なるちかくんがそんなこと、私に聞くんだろう。聞いたところで何の得にもならないし、なるちかくんには関係ないはず、なのに……。
「いない、よ」
「いないの?」
「うん」
「佐野は?」
「りんくんはそういうのじゃないもん」
佐野こと、りんくんこと、佐野 麟太郎くん。
近所に住む、生傷の絶えない男の子の姿をふと思い浮かべる。彼もまた、なるちかくんに次ぐ保健室の常連さんだ。
「へえ、仲良いのに」
「それは、幼なじみだからです」
それに、りんくんには、すきなひとがいるし。
「ふーん」