いちばん星の独占権



なるちかくんの方から聞いてきたはずなのに、少しも興味のなさそうなそっけない返事が返ってきた。




「そういうなるちかくんは────」




“すきなひと、いるの?”


そう続くはずだった言葉は、タイミングよくひらいた扉の音にかき消されてしまった。ガラガラッ、と派手な音の奥から現れたのは。




「りっちゃん先生……!」

「あらら、ほのかちゃん」

「こんにちはっ」

「ふふ、今週も、おじゃまします」





慣れた様子で、椅子に腰かける。その拍子に、花柄のスカートがふわっと浮いた。


笑顔の似合うかわいいひとで、そのおちゃめな仕草から生徒たちからも人気を集める “りっちゃん先生” 。


彼女が首から下げたカードには 《 中村 璃世(なかむら りせ)》 と油性マーカーのまるまるとした字でフルネームが記されている。




りっちゃん先生は、保健室の先生────ではなく、非常勤の心理カウンセラーの先生なの。

ほとんど毎週、週のまんなかの水曜日、この学校を訪れて生徒たちの相談を受けている。それがりっちゃん先生のお仕事だ。




りっちゃん先生には専用の教室がないから、保健室を間借りすることになった、と最初に会ったときに言っていた。


毎週ここを訪れるりっちゃん先生といつも当番のわたしが仲良くなるのは必然のこと。




それに、りっちゃん先生ってすごく話しやすいの。大人なのだけど、大人っぽくない。


ほかの先生たちとはぜんぜん違って、親しみやすくて……、わたしも、みんなと同じようにりっちゃん先生がだいすき。






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