いちばん星の独占権
「つっても、付け焼き刃だけどな」
「そうなの?」
「今、言った分の星しかわかんねーし」
「じゅうぶんだよ」
「はは」
声をあげて笑ったなるちかくんは、ふいに後ろに体を傾けて、背中を地面にくっつけて寝転がった。
瞳に夜空だけをうつして、静かに口を開いて。
「振り向いてくんねーかな、って思ったんだ」
「……?」
「俺とりっちゃん、家が隣の、いわば幼なじみでさ。まあたぶん、向こうからすれば幼なじみってより、弟みたいなもんだと思うけど」
「……うん」
「きっかけとか、正直よくわかんなくて、でも、気づいたときにはりっちゃんのことが好きだった。年上のお隣のお姉さん、ってだけで、じゅーぶん、憧れの対象だったんだと思う。……けど、りっちゃんは俺のこと、子どもとしてしか見ないから。男として見られたことなんて、一回もねえの」
なるちかくんの声が、淡々と物語を紡いでいく。
りっちゃん先生となるちかくんの、織姫と彦星にはならない、ふたりの物語。
「中学生のときさ、俺としては一世一代の告白をしたんだよ。 りっちゃん、なんて言ったと思う? 嬉しいけど、そういうことは好きな子以外に言っちゃダメってさ、戯言扱いだよ、ありえねえっつの。 ……たぶんそのときくらいから、何かがひっくりかえって、りっちゃんのこと純粋に好きってよりか、振り向かせたい方が強くなった」